レンズの向こう側。

写真にはかけがえのない思い出を永遠のものにする力がある

Assassin

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この方…年に1回か2回か、それぐらいの頻度で狙い撃ちます(笑)

 

さてさて…

昆虫界においても、生態系といますか、食物連鎖というものは、ごく自然に当たり前のごとく存在します。

その生態系、食物連鎖の頂点に君臨するのは、ご存知のとおり「オオカマキリ」「オオスズメバチ」「オニヤンマ」といった最強かつ最恐グループ(以下、「トップグループ」という)です。

 

ざっくりとではありますが、そのトップグループのそれぞれについて書き記したいと思います。

 

まずはオオカマキリ
なんといっても、やはり剛力よろしくのあの大きなカマです。
あの二つの強力なカマに捕まったら、自由に動き回る世界には二度と戻ることができないでしょう。幼少期の頃から、自分よりも数倍大きな相手に対して果敢に攻め、闘争本能をむき出しにして狩りを行います。
フェイクかもしれませんが、一説によると、ハリガネムシ(カマキリ、バッタ、コオロギ等に寄生するハリガネのような形をした寄生虫)に寄生されたオオカマキリは、そのハリガネムシによる洗脳で凶暴さが増すのだとか。強さを手に入れるため「悪魔に心を売った」…そんなイメージでしょうか。
ちなみにですが、カマキリは共食いをすることでも有名な種であることを申し添えておきます。

次にオオスズメバチ
人間ですら恐怖におののく昆虫界きってのワルです。
襲った相手を噛み砕き肉団子として調理し、それを幼虫に与えるという猟奇の極み。
少し前になりますが、女郎蜘蛛の罠にかかったオオスズメバチを見かけました。圧倒的にホームグラウンドである女郎蜘蛛が有利だと思いながら、しばらく観戦していたところ、蜘蛛の巣に絡みながらも女郎蜘蛛に喰らいついているではありませんか。結果、女郎蜘蛛は瀕死状態で虫の息。オオスズメバチも罠からの脱出はできませんでしたが、最後は、蜘蛛の巣にかかった状態のまま、女郎蜘蛛をお得意の肉団子にしていました。極悪本能恐るべしです。
余談ですが、スズメバチは毒針を持っているのはメスだけです。オスは毒針を持たなので、容易に捕まえることはできますが、メスと比べると1割程度しか存在せず、しかも、そのほとんどが女王蜂に支えている(子孫繁栄の儀に資する)ため、あまり見ることができません。

そしてオニヤンマ。
まさかの伏兵と言いますか…「オニヤンマってトンボだよね!?トンボなのに強いの?」って思う人も多いかと思います。
オニヤンマは日本最大のトンボです。
オニヤンマの幼少期は、水の中で暮らすヤゴです。”暮らす”なんて表現をすると慎ましいイメージが先行しますが、ヤゴ期のその暮らしは、”狩り”無くしては語れません。幼少の頃からの肉食は有名で、その肉食本能のまま大人になりトンボへと成長します。そして狩り場を水中から空中へと変え、悠々自適に飛びまわりながら狩りをします。オニヤンマの最大の特徴は、飛行中でも獲物を捕獲できるということ。その飛行はアクロバティックでホバリングや高速旋回はお手のもの。そして何と言っても強靭な顎です。人を襲うことはありませんが、指を噛まれると血が滲むくらいの強さがあります。

 

さて、ここまでトップグループについて、簡単ではありますが、それぞれの特徴を述べさせていただきました。

 

・闘争本能むき出しのオオカマキリ
・極悪本能むき出しのオオスズメバチ
・肉食本能むき出しのオニヤンマ

 

この中で、どれが一番強いのかはわかりません。
それぞれ、その時々で得意のステージ、また不利なステージがありますので、勝つこともあれば負けることもあります。
そのあたりのVSっぷりは、YouTubeで「オオカマキリVSオオスズメバチ」等で検索すれば、たくさんアップされているので、ぜひ探して観てみてください。

 

ここまで昆虫界のトップグループについて紹介してきましたが…
そのトップグループですら震えあがるヤツがいることをご存知でしょうか。

 

以上、ここまでが本投稿の序章です。

少し長い序章となりましたが、いよいよ本編へと移らせていただきます。

 

タイトルに「Assassin」(以下、「アサシン」という)と付けさせていただきました。
アサシンとは、暗殺者、刺客といった意味を持つ英単語です。

 

これから紹介するのは、そのアサシンの異名を持つ昆虫です。

 

名前を「シオヤアブ」と言います。

 

シオヤアブは、日本のほぼ全域に生息する褐色の大型のアブです。
ブーンという大きな羽音を鳴らしながら飛ぶので、比較的見つけやすいです。
オスの尻尾の先についた白い毛が塩のように見えることから、塩屋虻(シオヤアブ)と命名されたようです。(写真の個体は白い毛がないのでメスだと思われます)

 

シオヤアブの攻撃方法は、ただ一つ。吸血です。
吸血というと語弊があるかもしれませんので、「体液を吸う」と表現した方がいいかもしれません。

シオヤアブは、葉や石の上で待ち構え、現れた敵に対し一瞬にして死角となる背後に回り込み、バックマウントポジションから一気に硬い口先を相手の急所(首の関節の柔らかい部分)に差し込み、運動能力を担う神経を一刀両断した上で体液を吸います。

序章で紹介したトップグループですら、バックマウントされた瞬間にこの世とのお別れです。
せめて、掴みあったり噛みつきあったりするチャンスがあれば、まだまだ勝負の行く末はわかりませんが、一瞬にして背後を取りに来るので、相手にとっては ”死闘を繰り広げる時間” が存在しないため、実質の最期となるのではないでしょうか。

 

人を襲うことはないとは言い切れませんが、近づいてもスズメバチのような危険性はないので、見かけた際には、ぜひ観察してみてください。もし捕食現場に立ち会うことができたら、それは最高の瞬間に出会えた思ってください。